ICANN一般会員(アットラージ)諮問委員会
チュニジア会合
活動調査報告書

2003年12月

 

アジアネットワーク研究所

 

 

 

目 次

はじめに
  1. チュニジア会合までの活動経過
    指名委員の選出
    ALS 、RAL 認証プロセスの策定
    ALS の認証申請

  2. チュニジア会合における活動内容
    地域別の組織化状況
     ヨーロッパ
     アフリカ
     アジア太平洋
    活動費用問題
  3. ポリシー問題への取り組み
    「ワイルドカード・サービス」問題
    ALAC 第 1 回声明(9 月16 日)
    ALAC 第 2 回声明(10 月13 日)
    新g TLD 導入
    WHOISデータベース
    WSIS
    各組織への連絡担当の派遣

参考資料ICANN 定款のなかのAtLarge に関する条項(2002 年12 月採択)

 

はじめに


 以 下は、ICANN の一般会員制度の動向について、2003 年10 月27 日から31 日にかけて開催されたICANN チュニジア会合に参加し、一般会員(アットラージ)諮問委員会(AtLarge AdvisoryCommittee=ALAC )の活動を中心に情報の収集を行い、当事者への面談を含めて調査した結果をまとめたものである。なお、一部、インターネット上で公表されている関連資料も収集、調査した。

ALAC 主催のWSIS ワークショップ

チュニジア会合 パブリック・フォーラム

1.チュニジア会合までの活動経過

 ALACは、2002年12月にICANN理事会が正式決定した定款の改正を受けて、2003年1月に理事会により初期暫定委員10名が選出され、活動を開始した。ALACの正式な機能としては、ICANNの活動に対して、「個人ユーザー」の利害を中心に考察し、助言を提供することと定義されている。
 理事会の決定では、基本的には、ICANNの活動に参加する個人ユーザーを、「一般会員組織=AtLarge Structure(ALS)」を基礎単位として組織化し、ALSの集合によってICANNの5つの地域毎に「地域組織=Regional AtLarge Organization(RALO)」設置・承認するという組織化のプロセスが設定されている。

 ALACは、5つのRALOが2名ずつ選出する10名と、指名委員会の指名による5名、計15名の委員から構成されることになっている。
 ただし、RALOが確立されるまでの暫定措置として、まず1月に理事会が世界5地域から各2名、計10名を「暫定委員」として選任し、その後4月に設置された指名委員会が6月に残り5名の委員を追加的に選任したもので、現在のALACは、ALSおよびRALOの確立・組織化それ自体を中心的な課題とする、暫定的な性格をもつものである。

指名委員の選出
 ALACは、発足後すぐにとりかかったのが、ALACによる指名委員への選定であった。公募によって、自薦・他薦で集まった候補者のなかから、地域毎に各1名、全世界で計5名選定する検討作業を行い、メーリングリストによるオンライン討論および電話会議を経て、3月に5名の候補を推薦することを決定した。理事会はこの推薦を受け入れ、5名がALAC推薦による指名委員会委員として正式に選出された。

ALS、RAL認証プロセスの策定
 次に、ALACは2003年4月から5月にかけて、ICANN活動に参加する個人ユーザーを組織化する作業として、基礎単位となる「一般会員組織=AtLarge Structure(ALS)」および「地域組織=Regional AtLarge Organization(RALO)」の認証のための必要最低基準、認証プロセス、RALO形成のガイドライン、理事会によるRALO承認手続案を検討し、6月にモントリオールで開催されたICANN理事会に具体案を提出し、承認された。

ALSの認証申請
 これを受けて、ALACはALSの募集を開始し、認証を求めるALS候補組織から申請が出され始めた。ただし、実際にALSの申請を行った団体は、10月末のチュニジア会合までに8団体であり、その後12月までに4団体増え、計12団体に達したが、出足は低調である。

表 1 ALSの申請団体(2003年12月末現在・団体名は仮訳)
アフリカ  スーダン・インターネットソサエティ ガーナ大学 アナイスAC
モロッコ・インターネットソサエティ
アジア太平洋 アラブ・ナレッジマネジメント協会(AKMS)
ヨーロッパ インターネットソサエティ・イタリア支部 情報技術・社会促進協会(FITUG) インターネットソサエティ・ルクセンブルグ支部 インターネットソサエティ・フィンランド支部
ラテンアメリカ アルファ・レディ コスタリカ・コンピューター科学協会

 なお、この間、ALACのメンバーは、4地域で合計10のイベントに参加し、ICANNの意義と一般会員となることを訴えたほか、メーリングリストなどで宣伝活動を行ってきた。

 

2.チュニジア会合における活動内容

 ALACは、次表のように、チュニジア会合の期間中に各種会合を開き、パブリック・フォーラムにおいて理事会に対してその活動経過を報告した。

表2 チュニジア会合におけるALACの主な活動・会議

10月27日 

アフリカワークショップ
ワイルドカード・ワークショップ(共同開催)
ALAC内部会合

28日 
ヨーロッパ組織化会合
ALACジョイント・コンスティチュエンシー会議
29日 
アジア太平洋組織化会合
WSISワークショップ(単独開催)
30日 
パブリック・フォーラム参加 ALAC活動報告
31日 
(理事会)ALAC内部会合

 

地域別の組織化状況
 ALACの地域別の組織化状況について、以下のように報告された。

ヨーロッパ
 ヨーロッパは、ミラノでも独自会合を開くなど、一般会員組織化の取り組みは5地域のなかではもっとも活発といえ、具体的な検討が進められている。EUも個人利用者・市民社会のICANNへの関与を支持する姿勢をみせており、RALOの設置ではヨーロッパがもっとも先行する可能性は高いとみられる。

 すでに複数の利用者グループがメーリングリストなどを介してコーディネーションを進めており、今年中に相当数のALS申請を行い、来年の1月から3月にかけて、RALOの定款案を検討し、3月のローマ会議から7月のクアラルンプール会議の間で、正式に発足にこぎつけたいとしている。

アフリカ
 ALACは、チュニジア会議の冒頭、10月27日に、国連開発計画(UNDP)の資金援助を受けた10名を招待し、他に一般参加した人も含め、アフリカの人々を対象としたICANNの活動全般についてのオリエンテーション・ワークショップを開催した。

 アフリカ地域では、ICANNケープタウン会議が開催される2004年12月を期してアフリカRALOを設置することを目標として、今後以下の予定で、一般会員組織の形成を図る方針であることが報告された。

2003年10月:3名のALAC委員と他の10名による連絡会議を発足
2004年 3月:ICANNローマ会議 ALSのクリティカルマスを確保
  6月:暫定RALO委員会を設置し、定款案起草に着手
  9月:アフリカRALOを組織化
 10月:アフリカRALO正式発足

アジア太平洋
 アジア太平洋地域からは以下の活動報告がなされた。

 2003年8月、APNG(アジア太平洋ネットワーキンググループ)は釜山会合で、AtLarge委員会を発足させた。同じ頃、中国では、中国インターネット協会がユーザー組織を形成し、ALS申請の準備を整えたという。

 台湾では、TWNICが事務局を務めるインターネットソサエティ台湾支部、ネット消費者保護協会、台湾インターネット協会の3つの組織がALSの候補と考えられるが、必ずしも意義が充分に浸透している状態ではないとの報告があった。

 日本からは、日本およびアジアでのALS、一般会員組織化への取組方法について、関係者有志による検討を始めようとしている旨の報告を行った。

 なお、チュニジア会合では、北米および中南米のALACメンバーの参加はなく、地域での活動報告も行われなかった。北米はとくに一般会員への関心は低いが、これは、ICANNの「改革」によって選挙制度が廃止されたことへの批判の強さを物語っているといえる。

活動費用問題
 ALACの活動費用については、RALOが組織化された以降は、RALO単位で自立的に賄うことが想定されているが、現状では、ICANN本部予算に依存している。ICANN予算では、2003年度には8万ドルの支出を見込んだのに対し、2004年度には4万ドルと、RALOの設置に伴って大幅減額を想定している。ただし、実際にはRALOの設置はこの想定より遅れており、かつICANN会合にALAC委員が実際に参加する費用が、理事会選出委員については年間1回しか設定されていないため、ALACの活動への制約となっている。チュニジア会合では、ALACのベルトーラ委員長が理事会に対してこの点を指摘し、活動予算の増額を求めた。
 なお、後述するWSIS問題の影響もあり、ICANN本部はALAC予算の増額も検討している模様であるが、具体的な額などは明らかになっていない。

 

3.ポリシー問題への取り組み

 現在のALACは、地域RALOの確立のための組織化活動を優先するというその暫定的な性格から、具体的なポリシー問題への関与は、当初は控えるべきだという考えも一部には存在していた。しかし、一般利用者のICANNへの関心を高め、ALS、RALOへの組織化を推進するためには、むしろ具体的なポリシー問題に積極的な関与を推進し、利用者としての立場から発現を行うことの意義を具体的な問題を通して訴えるほうが有効であるとの考え方が次第に強まり、実際にも、個別ポリシー問題への関与、発言を開始している。

 ALACは、これまでに、WHOISデータベースにおけるプライバシー管理問題をはじめ、新gTLDの創設、ベリサイン社によるワイルドカード・サービス(「サイトファインダー」問題)などで、独自のコメントを発したり、タスクフォースに関与したりするなどの活動を行ってきている。ALACのメンバーが参加しているタスクフォース、ワーキンググループは、以下である。

表3. ALACメンバーが参加するタスクフォース、ワーキンググループ
Transfers Assistance Group Thomas Roessler, Sebastian Ricciardi
WIPO II Working Group Sebastian Ricciardi;
GNSO’s new gTLD Committee liaison Wendy Seltzer
GNSO’s Whois Steering Committee liaison Wendy Seltzer, Thomas Roessler
GNSO Whois Task Force #1 liaison Wendy Seltzer, Thomas Roessler
GNSO Whois Task Force #2 liaison Wendy Seltzer, Thomas Roessler
GNSO Whois Task Force #3 liaison Vittorio Bertola
GNSO Registry Services Task Force 未定
(Informal) WSIS coordinating group Vittorio Bertola.

 

「ワイルドカード・サービス」問題
 9月16日に.comの登録管理を行っているベリサイン社が突如開始し、広範な批判を受けて停止するにいたった、「ワイルドカード・サービス」問題について、ALACはICANN内外の諸団体のなかで、もっとも早く、サービスが開始された翌日の9月17日にこれを強く批判する声明を出し、ICANNコミュニティに積極的な注意を喚起し、理事会には即時行動をとるよう要請を行った。

 このALACによる声明は、ベリサイン社による、「ワイルドカード・サービスは利用者に利便性を与えるものだ」を、当の利用者側から否定する内容をもったもので、全体の議論の流れを方向づける効果的な役割を果たしたものと考えられる、ICANNのレジストラー、ccTLDなどからも、そのような評価を受けている。つまり、彼らは、立場上、直接利用者の代弁をすることはできないが、ベリサイン社の行動にはきわめて批判的で、ALACが利用者の立場から明確な反論を行ってくれたことは、非常によかったという捕らえ方が強かった。

 今回の「事件」は、これまで直接求められることがほとんどなかった、特定の問題をめぐっての利用者からの意見表明が必要となり、ALACがそれに対してタイムリー、かつ内容的にも的確に反応したことは、ICANNの活動全体にとって利用者側からのの活動が必要かつ意義があるということを示した、おそらくほとんど最初の事例となったといえる。

表4.ワイルドカード・サービスをめぐる動き
9月15日 
ベリサイン社、ワイルドカード・サービス開始
16日 
ALAC声明_
コミュニティの一員として懸念を表明
エンド・ツー・エンドの原理に外れる
サービス停止を要求
19日 
ICANN「サービス停止」要求
21日 
ベリサイン、ICANNに反論
10月3日 
3日 
ICANN、停止しないと法的措置と警告
ベリサイン社、サービス停止
13日 
ALAC声明_
ユーザーの選択の権利の確保を
イノベーションは、中央ではなく、エッジで
28日 
ALACなど、チュニジア会合でワークショップを共催

 以下に、9月16日に出したALACの第1回の声明と、10月13日に出した第2回の声明の日本語による要約と原文を紹介する。
 

ALAC 第1回声明(9月16日)
http://alac.icann.org/redirect/request-comments-17sep03.htm

 ALACはベリサイン社が「サイトファインダー」を開始したの驚くべき事態について、ICANNの注意を喚起したい。存在しないドメイン名の検索に対してベリサイン社による検索サービスを提供することは、技術的に重大な懸念をもたらす。DNSプロトコルの標準エラー処理をHTTPだけに特化して処理することは問題であり、インターネットの安定性を増進することはならない。ベリサイン社が、インターネットの基本デザインを無視して個別サービスレベルで対処することでは、問題は解決しない。

 このサービスはユーザー側のコンピューターのアプリケーションの利用によって起きるエラー処理の決定をレジストリー側に委ねることになる。これはユーザー側がどのようなエラー処理をするか、市場の競争の中から自分たちのニーズに適した製品を選択する機会の損失を意味する。ソフトメーカーも、ユーザーニーズに最適なツールを開発する革新の機会を失うことを意味する。

 私たちは、ICANNに対して、この「サービス」を停止させるために必要な手段を取ることを強く求める。

The At-Large Advisory Committee would like to bring to ICANN's attention concerns about Verisign's surprising roll-out of the "SiteFinder" service for .com and .net. SiteFinder works by re-directing queries for non-existing domain names to the IP address of a search service that is being run by Verisign.

This practice raises grave technical concerns, as it de facto removes error diagnostics from the DNS protocol, and replaces them by an error handling method that is tailored for HTTP, which is just one of the many Internet protocols that make use of the DNS. We will leave it for others to explain the details of these concerns, but note that returning resource records in a way which is contrary to the very design of the DNS certainly does not promote the stability of the Internet.

These concerns are not mitigated by Verisign's efforts to work around the consequences of breaking the Internet's design on a service-by-service basis: These workarounds make specific assumptions on the conclusions that Internet software would be drawing from non-existing domain names; these assumptions are not always appropriate.

When working as intended, the service centralizes error handling decisions at the registry that are rightly made in application software run on users' computers. Users are deprived of the opportunity to choose those error handling strategies best suited for their needs, by choosing appropriate products available on a competitive marketplace. Software makers are deprived of the opportunity to compete by developing innovative tools that best match the user's needs.

We urge ICANN to take whatever steps are necessary to stop this "service."

 

ALAC 第2回声明(10月13日)
http://alac.icann.org/redirect/

 サイトファインダーの停止は、何百もの具体的なアプリを破壊したからだけではなく、グローバルなインターネットユーザーに、事前に何の相談や通知もなく強制したからだけでもなく、インターネットのエンド・ツー・エンドのアーキテクチャーを破壊し、1社に対して中央での独占的なコントロールを与えたから必要となったのだ。それはMSNサーチとの競争ではなく、ベリサイン社にURLのエラー処理の排他的中央コントロールを与え、ネットのエッジの部分でのユーザーとアプリケーションにその選択を押し付けようとした。問題は、ユーザーが自分たちのニーズに最適のサービスを選択するのか、ベリサイン社がその選択をユーザーから奪い、ベリサイン社の企業利益に最適な選択を強制するのか、なのだ。

 サイトファインダーは、ウェブだけではなく、ネット上で動く他の多くのアプリケーションにも影響を及ぼす。ここでの問題点は、ネットワークは新しいプロトコルやアプリケーションに対してオープンに維持されるか、インターネットはどのアプリケーションをよくサポートするかをベリサイン社が決めるようになるか、だ。サイトファインダーをネットの中心から排除し、ネットのエッジで新しいプロトコルやサービス、機能を追加することは、新しいイノベーションを可能とする最大限の柔軟性をもたらす。ICANNはサイトファインダーのインパクトについて「さらなる評価と検討」を呼びかけた。ベリサイン社が考えるべきなのは、広告モデルに支えられたサーチを、そこならユーザーが自分たちの意思でそれを利用するかしないか決められる、ネットのエッジ部分のオプションとして再び実装するかしないかの問題だ。

SiteFinder's suspension was necessary not only because it broke hundreds of specific applications, and because it was forced on Internet users around the globe without any advance consultation or notice: SiteFinder also needed to be stopped because it broke with the end-to-end architecture of the Internet to give one company monopolistic control of a resource in the center. It's not a contest between SiteFinder's search page and MSN's, but between giving VeriSign sole, centralized control of the error-handling for incorrect URLs and distributing that choice among users and applications at the edge of the network. The question is whether users can choose what services fit their needs best, or whether Verisign can take that choice away from users, forcing them to do what's best for Verisign's commercial benefit.

Sitefinder affects not only the web, but most other applications running on the net. The question here is whether the network is kept open for new protocols and applications, or whether it's left to Verisign to decide which applications the Internet supports well.

Keeping SiteFinder out of the center leaves the greatest flexibility in the network for those who want to innovate by adding new protocols, services, and features at the ends.

ICANN has called for "further evaluation and study" of the impact of SiteFinder. The proper question for VeriSign to consider is whether it will reimplement its advertiser-supported search as an option at the edge of the network -- where users can elect or decline to use it at their will -- or not at all.

Vittorio Bertola, ALAC Chair,committee@alac.icann.org

 

新gTLD導入
 汎用のトップレベルドメインについては、「.biz」「.info」など7つが1999年に導入されて以来、新たな導入・追加はなされてこなかった。これは、主として導入に慎重な知的所有権を重視する人々の主張が強いために、新gTLDへの希望は強くあるのに、理事会としても時期尚早との意見が強かったとみられる。

 しかし、利用者の利便性からみて、ALACは、新gTLDの早期導入を主張し、そうした主張も行った。

 6月24日に発表されたICANNによる新規TLDについての提案文書に対して、ALACでは10月9日に声明を発表して、選択は市場に委ねるべきで、より広範で積極的な競争を導入し、ICANN(理事会)は、提案されている新TLDの実用性を判断すべきではなく、また、ビジネスモデルについてもその是非を判断する必要はないとした。したがって、とくに顕著な「危害」が予測されない限り、新TLDはできるだけ早く、また種類も多く認めるべきで、これまでのように「確認実験」という形で慎重に進めることでいたずらに時間稼ぎをするのでなく、地理的・文化的多様性を尊重し、利用者の選択を可能にするべく、速やかな導入を求めた。
http://alac.icann.org/correspondence/response-stld-process-09oct03.htm

WHOISデータベース
 ALACでは、発足直後の2月に、ドメインネーム登録者の「WHOIS」データベースについて、登録者に情報の正確性を求めるだけでなく、一定のプライバシー保護手段も実装することを求める声明を出した。その後ALACのメンバー(代表)は、GNSOのWHOISステアリンググループに参加し、データ要素の評価と見解を表明した。しかし、それ以降、ICANNとしてプライバシー保護に積極的に取り組む動きはほとんどみられず、ALACとしては、チュニジア会議中の10月29日にあらためて声明を発表し、プライバシー保護手段を至急実装することを求めた。ALACでは、「登録者が個人情報を任意で選択して登録する」か、または「すべての情報を提供するが、公開はしない」のいずれかがベストであるとした。
http://alac.icann.org/announcements/announcement-29oct03.htm

WSIS
 国連が主催して12月にジュネーブでその第一フェーズを開催した「世界情報社会サミット(WSIS)」では、その宣言案および行動計画案を検討する準備段階で、一部の国の政府から、インターネットのドメイン名、IPアドレスを含むガバナンス問題について、現在のICANNの体制を否定し、政府間国際機関への移管を求めるという主張が提出され、欧米、日本などこれに反対する国の政府との間で、激しい論争が続き、WSIS全体のなかでも、もっとも鋭い対立を示す問題点となった。

 ALACのメンバーのなかには、WSISの準備プロセスに市民社会(Civil Society)/NGOのメンバーとして、初期の段階から積極的に参加していたメンバーがいたこともあって、この問題にはいち早く注目・関与し、2003年6月のICANNモントリオール会議のパブリック・フォーラムの際に、理事会および全ICANN関係者に対して注意を喚起する最初の、かつモントリオールにおいては唯一の発言を行っていた。この結果、理事会およびスタッフの間では、WSISへの問題意識が高まり、1ヶ月後にパリで開かれたWSISの臨時準備会合には、ポール・トゥーミーCEOをはじめ、スタッフ、RIRなどの関係者が数名参加し、ワーキンググループでの発言やロビー活動にも関与するようになった。

 ALACでは、チュニジア会合において、WSISをテーマとしたワークショップを単独で主催し、ICANNスタッフ、RIRなどをはじめ、各組織にもさらに関心を喚起し、関与を深めるよう訴える活動を行った。

 ALACメンバーとしては、ビットリオ・ベルトーラ会長と会津泉が、WSISの市民社会のインターネット・ガバナンスグループにも加わり、その後も継続的に関心をもち、12月のサミット本会合まで関与を続けるにいたった。

 このWSISにおける論点とは、インターネットが近年になってきわめて多数の人々が利用するものとなって、いわば公共インフラとしての性格を強めたことに伴い、その管理にあたっても、従来の技術中心の制度・方法から、公共政策の観点をもった制度・方法が求められているという主張を背景とするものである。
 そして、中国、ブラジル、南アフリカなどの政府代表は、技術問題は技術者中心で管理することを認めつつ、「公共政策」に関連する問題は、政府が積極関与すべき役割と責任をもち、したがって、ITU(国際通信連合)などの政府間国際組織が所轄すべきだという主張である。当初は、ICANNに特定して議論する傾向が強かったが、9月になってからは、表現上は「インターネットの管理」全般を指すことになった。しかし、実質的には組織としてはICANN、課題としてはドメイン名およびIPアドレスなどの資源の管理体制についての議論が中心的な位置を占めていた。

 この背景には、ICANNが米国政府商務省による覚書を法的根拠として、ルートサーバーなどの運用を委任されているという現行体制に対する、他国政府からの反発という要素もある。また、ICANNにおける政府諮問委員会(GAC)が意思決定には直接関与できないことへの批判もある。

 「個人利用者がICANNによる資源管理体制の意思決定プロセスに参加する」ことを目的とするALACにとっては、こうした形での問題提起は、ある種の「追い風」として作用してきたといえる。すなわち、政府の関与を強めようという主張に対して、「民間主導」を主張する場合には、その「民間」のなかに、技術・サービスの「提供者」側の事業者とともに、その提供を受ける「利用者側」も有効に参加する体制が存在することを実証することが重要になるからである。

 言い換えれば、国・政府の直接関与を否定するのであれば、『産業界の自主規制』というモデルが対置できるが、しかし、そこには、「公的政策分野」における資源管理の問題であるとすれば、他方の当事者である「利用者」ないし「市民」が関与し、彼らがその体制に充分満足し、機能しているということが求められるのである。

 仮に利用者=消費者=市民の参加が否定されていたり、不十分であったりするのであれば、「」という旗印のもとに、政府の関与が必要になるというのが、かつてICANNにおいて一般会員制度と、とくにその選挙についての議論が交わされていた際のGAC議長で、オーストラリア政府代表だったポール・トゥーミー氏(現ICANN・CEO)や、EU政府でICANNを当初から担当しているクリストファー・ウィルキンソン氏らの発言であった。

 したがって、かりに「利用者代表」に近い立場であるALACが、現在のICANNでは市民・利用者の意見は充分に反映される構造になっていないということを明言すれば、別の立場からICANNの体制を批判し、政府間国際機関への移管を主張する政府の関与に口実を与えることも考えられるという図式が存在している。

 チュニジア会合におけるワークショップでも、こうしたICANNのなかでの利用者の意見をどうとらえ、制度化するのかという点が議論されたが、技術者を中心とする現在のICANNの中心的な流れの人々の間には、「政府規制などとんでもない」という感情的反発が強く、国連とWSISという「政治の場」での主張についての理解が充分には存在していないことも露呈したといえる。

 なお、WSISは、12月10日から12日に本会合が開かれ、最大の争点の一つであったインターネットの管理体制をめぐる問題では、国連事務総長のもとにワーキンググループを設置し、「インターネット・ガバナンス」についてまず定義し、その上でどのような課題に対してどのような制度が望ましいかを検討し、2005年の次回、チュニジアサミットの場で提案するようにという形で、いったん結論を先送りする妥協案が成立し、閉幕した。

 しかし、これで問題が解決したわけではまったくなく、利用者の関与をめぐって、ALACも今後の取り組みが必要であると認識しており、次回ローマ会合においても、WSISジュネーブ会合の結末と、これからの方向性について議論を行うワークショップの開催を予定している。

各組織への連絡担当の派遣
 ALACからは、理事会に1名、「連絡担当」を派遣することが認められ、イタリアのロベルト・ガエターノ氏が理事会の会合、電話会議などに参加している。

 同様に、GNSOに対しても、ドイツのトーマス・ロッセラー氏が連絡担当を務めている。

この結果、ICANNの中心的な意思決定機関である理事会での討議の状況などがより正確に理解できるようになり、またALACの活動状況についても、理事会をはじめICANNの各組織に対して、的確なコミュニケーションができるようになった。このメリットは大きいものと考えられる。


参考資料

ICANN定款のなかのAtLargeに関する条項(2002年12月採択)

 

4. At-Large Advisory Committee

 

a. The role of the At-Large Advisory Committee ("ALAC") shall be to consider and provide advice on the activities of ICANN, insofar as theyrelate to the interests of individual Internet users.

 

b. The ALAC shall consist of (i) two members selected by each of the Regional At-Large Organizations ("RALOs") established according to paragraph 4(g) of this Section, and (ii) five members selected by the Nominating Committee. The five members selected by the Nominating Committee shall include one citizen of a country within each of the five Geographic Regions established according to Section 5 of Article VI.

 

c. Subject to the provisions of the Transition Article of these Bylaws, the regular terms of members of the ALAC shall be as follows:

1. The term of one member selected by each RALO shall begin at the conclusion of an ICANN annual meeting in an even-numbered year.

2. The term of the other member selected by each RALO shall begin at the conclusion of an ICANN annual meeting in an odd-numbered year.

3. The terms of three of the members selected by the Nominating Committee shall begin at the conclusion of an annual meeting in an odd-numbered year and the terms of the other two members selected by the Nominating Committee shall begin at the conclusion of an annual meeting in an even-numbered year.

4. The regular term of each member shall end at the conclusion of the second ICANN annual meeting after the term began.

 

d. The Chair of the ALAC shall be elected by the members of the ALAC pursuant to procedures adopted by the Committee.

 

e. The ALAC shall annually appoint one non-voting liaison to the ICANN Board of Directors, without limitation on re-appointment, and shall, after consultation with each RALO, annually appoint five voting delegates (no two of whom shall be citizens of countries in the same Geographic Region, as defined according to Section 5 of Article VI) to the Nominating Committee.

 

f. Subject to the provisions of the Transition Article of these Bylaws, the At-Large Advisory Committee may designate non-voting liaisons to each of the ccNSO Council and the GNSO Council.

 

g. There shall be one RALO for each Geographic Region established according to Section 5 of Article VI. Each RALO shall serve as the main forum and coordination point for public input to ICANN in its Geographic Region and shall be a non-profit organization certified by ICANN according to criteria and standards established by the Board based on recommendations of the At-Large Advisory Committee. An organization shall become the recognized RALO for its Geographic Region upon entering a Memorandum of Understanding with ICANN addressing the respective roles and responsibilities of ICANN and the RALO regarding the process for selecting ALAC members and requirements of openness, participatory opportunities, transparency, accountability, and diversity in the RALO's structure and procedures, as well as criteria and standards for the RALO's constituent At-Large Structures.

 

h. Each RALO shall be comprised of self-supporting At-Large Structures within its Geographic Region that have been certified to meet the requirements of the RALO's Memorandum of Understanding with ICANN according to paragraph 4(i) of this Section. If so provided by its Memorandum of Understanding with ICANN, a RALO may also include individual Internet users who are citizens or residents of countries within the RALO's Geographic Region.

 

i. The criteria and standards for the certification of At-Large Structures within each Geographic Region shall be established by the Board based on recommendations from the ALAC and shall be stated in the Memorandum of Understanding between ICANN and the RALO for that Geographic Region. The criteria and standards for the certification of At-Large Structures shall be established in such a way that participation by individual Internet users who are citizens or residents of countries within the Geographic Region (as defined in Section 5 of Article VI) of the RALO will predominate in the operation of each At-Large Structure within the RALO, while not necessarily excluding additional participation, compatible with the interests of the individual Internet users within the region, by others. Each RALO's Memorandum of Understanding shall also include provisions designed to allow, to the greatest extent possible, every individual Internet user who is a citizen of a country within the RALO's Geographic Region to participate in at least one of the RALO's At-Large Structures. To the extent compatible with these objectives, the criteria and standards should also afford to each RALO the type of structure that best fits the customs and character of its Geographic Region. Once the criteria and standards have been established, the ALAC shall be responsible for certifying organizations as meeting the criteria and standards for At-Large Structures. Decisions to certify or de-certify an At-Large Structure shall require a 2/3 vote of all of the members of the ALAC and shall be subject to review according to procedures established by the Board. On an ongoing basis, the ALAC may also give advice as to whether a prospective At-Large Structure meets the applicable criteria and standards.

 

j. The ALAC is also responsible, working in conjunction with the RALOs, for coordinating the following activities:

1. Keeping the community of individual Internet users informed about the significant news from ICANN;

2. Distributing (through posting or otherwise) an updated agenda, news about ICANN, and information about items in the ICANN policy-development process;

3. Promoting outreach activities in the community of individual Internet users;

4. Developing and maintaining on-going information and education programs, regarding ICANN and its work;

5 Establishing an outreach strategy about ICANN issues in each RALO's Region;

6. Making public, and analyzing, ICANN's proposed policies and its decisions and their (potential) regional impact and (potential) effect on individuals in the region;

7. Offering Internet-based mechanisms that enable discussions among members of At-Large structures; and

8. Establishing mechanisms and processes that enable two-way communication between members of At-Large Structures and those involved in ICANN decision-making, so interested individuals can share their views on pending ICANN issues.



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