共同声明・ICANNの組織改悪に反対する
改訂版

2002年3月10日


ICANNのプレジデント、スチュアート・リンは、2月24日に、ICANNの大幅な組織改変を提案するレポートを公表した。私たちは、リン報告と提案に反対する。というのは、リンの提案は、ここ数年多大な努力を傾注して、グローバルな民主主義の実現を模索してきたすべての努力を抹殺するものだからである。とくにこの組織改変案では、ICANNの意思決定の迅速さを優先し、インターネットの一般ユーザによる意思決定への参加の道を大幅に制限する一方で、少数の政府の全面的な参加に道を開いている。このような改変は、ICANNが模索してきた各国政府の利害にとらわれないグローバルな民主主義への試みを否定するものであって、認めることはできない。


もし、ICANNがこのリン提案を受け入れ、少数の政府に大幅な権限を与え、一ユーザの参加を事実上閉め出す組織改変を受け入れるとすれば、ICANNは、WTO/IMF/WBといった従来の多くの国際機関と事実上何ら変ることのない組織となるであろうことは明白である。ドメイン名とIPアドレスはインターネットのコミュニケーションの基盤であり、しかもICANNで扱うこの狭い分野について、現実の国家を通じて民主的に一般ユーザの意見を反映させることは困難である。
従って、ICANNの政策決定からの一般ユーザの排除は、自由なコミュニケーションを阻害し、一部の有力な政府、多国籍企業のための利益を優先し、政治的、軍事的な目的に従属することとなるだろう。


リン報告は、「ICANNの創設当時の推進の理念はコンセンサスであったが、9月11日の事件によって、効率性がむしろ重要になっている。中核的なインフラの管理をになうすべての組織の責任に共通することだが、ICANNもまた必要なときに行動できなければならない。」と率直に述べている。ここで言及されている「効率性」は市場の効率性ではなく、政治的、軍事的な意思決定のための効率性であり、そのためにコンセンサス重視というICANNの基本理念を放棄するというものである。これは、インターネットのインフラを戦時、有事のために、利用し、自由とプライバシーが保障されたコミュニケーションをないがしろにするものであって、断じて認めることはできない。


コミュニケーションの権利は、基本的人権であり、インターネットのガバナンスは、この権利を保障することを最優先すべきである。そして、社会的なインフラと技術的なアーキテクチャは、いかなる理由があろうともこのコミュニケーションの権利を侵害することがあってはならない。残念ながら、リン報告は、この基本的な理解を欠き、コミュニケーションの権利よりも、一部の国家の利益を優先させる間違った立場に立っている。


インターネットのグローバルな展開は、国境を越えた人々の自由なコミュニケーションを支え、市場と先進諸国によるグローバル化の暴力と闘うグローバルな民衆のネットワークを支えてきた。しかし、リン報告によるインターネットのガバナンスの改悪は、民衆のグローバルなコミュニケーションの権利に深刻な打撃を与えかねず、その結果として、グローバルな民衆の運動に対しても深刻な影響を与えかねず、絶対に認めることはできない。


私たちは、特に、「効率性」の重視、コンセンサスと民主的なプロセスを否定する報告書の提案については容認できない。以上の点をふまえて、ICANN理事会が下記の点を速やかにウエッブ上に公表することを要求する。


1. ICANN理事会は、リン報告の線に沿った組織改変を行わないことを明確にすべきである。

2. ICANN理事会は、リン報告が提出されるにいたった経緯と理事会における議論を明らかにすべきである。

3. ICANN理事会及びリンCEOは、各国政府、特に合州国とどのような議論がなされたのかを明らかにすべきである。


発起団体

JCA-NET
ネットワーク反監視プロジェクト(NaST、ICANNのNCDNCメンバー)
連絡先
小倉利丸
toshi@jca.apc.org


賛同団体、個人(順不同)

賛同団体
レイバーネット日本
ATTACK JAPAN
反監視ネットワーク
ピープルズプラン研究所
民衆のメディア連絡会(有志)

個人
大榎 淳(東京経済大学助教授)
守谷訓光(自由国際大学JAPAN)
松原明 (レイバーネット日本)
会津 泉
安田幸弘 (フリーランス・ライター)
福冨忠和(ジャーナリスト、メディアプロデューサー)
東浩紀 (批評家)
板垣竜太 (日の丸・君が代に対抗するネットワーク管理人)
吉田悠樹彦 (慶応義塾大学院 政策・メディア研究科/舞踊学会
/WDA-AP/DanceMailingListモデレータ)
羽後静子 (Center for International and Security Studies (Canada))
白石 孝 (プライバシー・アクション)
栗原幸夫 (編集者)
佐分利 豊 (千葉短期大学)
村田 久(北九州かわら版)
今井恭平(ジャーナリスト ムミアの死刑執行停止を求める市民の会・代表)
田口雄一郎 (九州大学大学院、助教授)
大内忠雄 (電気通信産業労働組合 本部執行委員長)
小川昌義 (電気通信産業労働組合 本部執行委員)
松井やより (「戦争と女性への暴力」ネットワーク代表)
日比野 真 (レズビアン?ゲイ?バイ?ヘテロ?......?生と性はなんでもありよ! の会プロジェクトP)
岡田剛士 (派兵チェック編集委員会)
土松克典 (日韓投資協定NO!緊急キャンペーン)
角田富夫(横浜事件の再審を実現しよう!全国ネットワーク)
宮崎俊郎(やぶれっ!住民基本台帳ネットワーク市民行動)
吉村英二 (日本消費者連盟)



logo-s2.gif (株)アジアネットワーク研究所
〒152-0022 東京都目黒区柿の木坂1-28-15
TEL: 03-3725-3801  FAX: 03-3725-4960
E-mail : info@anr.org

Copyright(C) 2000-2002 (株)アジアネットワーク研究所