届くか、アジアの声『日経マルチメディア』連載 アジアネットワーク便り(10月号) (アジアネットワーク研究所/クアラルンプール)
どちらも階層構造をもち、世界中で同一のアドレスやネームが存在しないよう各国間で調整される。両者を照合するデータベースが整備され、メールもウェブも簡単に相手が見つかる仕組みになっている。 これらの総元締めが、米国のIANA(インターネット・ナンバーズ・アサイン・オーソリティー)という、南カリフォルニア大学付属の研究機関で、米国政府からの「研究委託」に基づいて統括業務を行なってきた。ドメインネームには、「.jp」、「.uk」など国別のものと、「.com」「.org」など世界共通のものの二種類があり、後者は米国のNSI社が、やはり米国政府からの委託契約下で割当管理業務を続けてきた。 しかし、インターネットが研究用から一般商用へと大きく発展した結果、1996年頃から新しい体制を模索する動きが始められた。この間、ドメインネームと登録商標との摩擦が起き、IPアドレスの割当体制も問題とされ、米国政府がIANAやNSIと結んでいる委託契約は健全な市場競争を妨げるとの批判が強まった。 様々な経緯を経て、現在の契約の一方の当事者である米国政府が、今年はじめに報告書(グリーンペーパー)をまとめ、IANAに代わる新法人を設立することを提案した。これに対して、インターネット経由で寄せられた世界中からのコメントの大半は、米国の意向が強く出過ぎていると批判的だった。これらを受けて米国政府は6月、新法人の機能、組織の決定を大幅に民間に委せる新提案(ホワイトペーパー)を出し、大筋では各国関係者から歓迎された。現行の契約は9月末で終了するが、米国政府は延長は考えず、民間主導への移行を明言している。 そこで、欧米の関係業界団体がIFWP(インターナショナル・フォーラム・オン・ホワイトペーパー)という組織をつくり、7月初めにワシントンで、下旬にはジュネーブで、連続して「ワークショップ」を開き、あるべき新組織の機能、制度を中心に侃侃諤諤の議論を戦わせた。私が事務局長を務めているアジア太平洋インターネット協会(APIA)がアジアからは唯一IFWPの幹事会に参加し、8月中旬にはシンガポールで3回目のワークショップをホストした。準備期間がわずか一ヵ月、各国の利害関係者の対立も根強く、舞台裏は厳しいものがあった。 シンガポールにはアジア太平洋の18カ国・地域をはじめ、32カ国150名が集まった。欧米の発想に偏ることなく、真にグローバルな体制を創るために、アジア側からの意見を出すことが最大の課題だった。たとえば米国側は「政府は手を引き、民間主導で進める」と言うが、アジアでは、是非はともかく、現実には政府が動かない限り民間は動けない構図の国が多いのだ。英語に限らず多言語対応を強調するのもアジアならではの意見だ。とかくシャイなアジアから、そうした声が率直に出るように、運営を工夫してみた。 各国政府にも参加を呼びかけたが、わが日本は腰が重く、郵政省が「重要性は認識しているが、出張旅費がないので」と、現地の大使館に出向中のT氏が顔を出しただけだった。地元シンガポールはもちろん、インドが二名、カンボジアも一名と、途上国政府からも熱心な参加があり、オーストラリア政府は議論の進行に積極的に協力してアジア太平洋諸国の一致点を強調したのとは実に好対照だった。日本は各国の関係者からの期待は高いのに、アジアの中でのリーダーシップを積極的にはとろうとしない。 この原稿が印刷される頃には、米国での総括会議が開かれ、結論が出ている可能性が高い。新体制に、どこまでアジアの声が届くのか、日本の役割が問われているのだが・・・。
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