ヒマラヤのインターネット『日経ネットビジネス』連載 アジアネットワーク便り(2000年2月号) (アジアネットワーク研究所/クアラルンプール) ネパールは世界でも最貧国(LDC)に属し、1人当たりの国内総生産(GDP)は年間210ドル、日本の約150分の1だ。しかし、ポカラの湖畔を散策する限り、ここが最貧国とはとても思えない。場所によっては10メートルおきにインターネットの店が並んでいる。看板に「ISD(国際電話)、FAX、Internet、E-mail」と大きく出ている。たいていは小さな店で、普通の電話機とパソコンが1台ずつある。市内電話が1分3ルピー(約5円)、インターネットは1分9ルピー(約12円)というのが標準の料金だ。ヒマラヤの山々に数週間もトレッキングに出かける欧米人たちにとって、家族や職場と連絡するのに電子メールは欠かせないのだろう。地元のホテルや旅行代理店も海外の客とメールで連絡するのは当たり前だ。 ポカラには、20年前から地元の障害児のための学校を開いている日本人がいる。実はその人は私の中学時代の最初の英語の先生だった。その彼がネパールにいるのは聞いていたが、定かではなかった。そこでネットだ。検索サービスgooで「大木章次郎」と名前を入れると、すぐに彼を支える「ポカラの会」のページが見つかった。 そのページでは最近の活動状況から、米国人神父がゲリラに暗殺され彼にも殺害予告の脅迫電話があったことなどまで分かる。ポカラの会の主宰者、倉光さんにメールで行き方を教えてもらった。現地から電話して、翌日小さな学校を訪ねた。33年ぶりの再会だ。障害児25人に職員10名。ほとんどが日本人の寄付で賄われているという。子供たちの様子を見学し、夕食をはさんでネパールの状況、日本の教育のことから昔話まで、話は尽きなかった。 一方首都カトマンズの街頭は貧しい人々であふれていた。現金などをせがむ子供たちに囲まれると心が痛む。しかしインターネットに関しては、最貧国とは思えない実力を持つ。事実マレーシアの知人が、UNDP(国連開発計画)の派遣でネパールの情報政策立案支援のためにカトマンズを訪れ、戻ってくるなり「プロバイダーの質はマレーシアより高い」と感心していた。 その彼の紹介で、ネパールのプロバイダー、ワールドリンク社の経営者、シャシャンク・カンサール氏と昨年知り合った。「休暇で行くけど、ぜひ会おう」とメールを入れた。結局、カトマンズとポカラのホテル、エベレスト遊覧飛行など、すべてカンサール氏がアレンジしてくれた。短いカトマンズ滞在の割には多くの人を紹介され、ネパールの発展のためにネットがどう活用できるか、産業界や政府のトップにどう理解させればよいか、一緒に考えてくれと依頼された。休暇のつもりが、予想外に大きな宿題をもらって帰ってきたのだった。
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