いまなぜ《アジア》か?





 インターネットは経済発展を加速するか?

21世紀の地球社会は、少なくとも前半の数十年は、<ネットワーク社会>の形成を中軸に展開すると考えられます。これまでのアナログ技術に支えられてきた人間同士の社会的なコミュニケーションは、ディジタル技術の革新により、その規模も質も大きく変わろうとしています。近年のインターネットの爆発は、まさにその象徴であり、社会進化の原動力でもあります。

1993年に登場した米国のクリントン=ゴア政権は、「NII=全米情報インフラ」、続いて「GII=地球情報インフラ」を提唱し、先端情報技術を導入すれば新しい産業が生まれ、途上国でも経済成長が可能になるとする「ゴア・ドクトリン」を打出して、G7諸国を中心に、情報ネットワーク社会への道を歩む大きな流れを築きました。しかし、情報技術の恩恵を受けるのは先進諸国が中心で、途上国は取り残される可能性も否定し難く、いわゆる「情報貧者=ハブノッツ」を生み出すことへの懸念は消えていません。


 情報化に積極的なアジア諸国

こうしたなか、アジア諸国は情報化に対してとくに積極的な動きを示しているといえます。「四小龍」の韓国、台湾、香港、シンガポールでの情報化の勢いは、日本以上のものがあります。マレーシア、タイ、インドネシア、中国、インドなども、製造業の拠点としての経済成長に加え、情報化の推進でさらに発展するというシナリオを実践し始めています。ベトナム、カンボジア、ラオス、モンゴルなどの後発途上国も、インターネット導入を中心に、情報化による経済開発に高い関心を示しています。


 MSCで先行するマレーシア

2020年に先進国入りをめざすマレーシアでは、マハティール首相が、「MSC(マルチメディア・スーパー・コリドール)」構想を国の中核戦略と位置付け、大胆に推進する姿勢を鮮明にしています。MSCとは、首都の南の750平方キロの区域を特定し、「マルチメディア権利章典(Multimedia Bill of Gurantee)」を公布して外国企業の自由な進出を保証し、既存の法律に代わるサイバーロー(Cyber Law)」を施行して税制上の特典や知的所有権の保護を与え、「電子政府」、「スマートカード」、「スマートスクール」などの先導アプリケーションを実現しようという計画です。すでにMSC推進機関としてMDC(マルチメディア開発公社)が設立され、マハティール首相自ら訪米して説明会(97年1月)を開催し、米国先端技術企業の間に大きな反響を呼んでいます。

MSCは、2020年には全土に拡大される予定で、シンガポール、インドネシア、タイ、ベトナムなど、周辺諸国の情報化関連政策にも大きな影響を与えています。 これらアジア諸国におけるネットワーク社会形成への歩みは、まさに地球規模での壮大な実験で、中南米、アフリカなど他の発展地域に対しても大きな影響を与える戦略的重要性があると考えられます。


 アジアに学ぶ日本

日本にとっても同様です。戦後50年を経て、経済発展の頂点に達した日本の社会システムは、深刻な制度疲労に陥り、構造改革への決定的な突破口をいまだ見出すことができずに低迷しているといわざるをえません。いま、アジアの新しい成長の流れに参加し、新しい方向性を学ぶことは、21世紀日本の発展にとって、貴重な価値をもつでしょう。

日本は、インターネット型のオープン・ディジタル・ネットワーク(ODN)の構築を基軸に、産業・社会構造の再編成を断行すべき時期を迎えています。アジア全体のODNの形成・発展に戦略的にどうかかわるかに、今後の日本社会の死活がかかっているといって過言ではないでしょう。

グローバルなネットワークの普及は、個人や個別企業、地域コミュニティなどのグループが、「主権国家」の枠を容易に越えて交流することを可能にし、主権国家を前提とした従来の社会システムと価値観への大きな挑戦となると考えられます。

今後アジアにおいて、いわゆるアジア的な価値観と欧米型のそれとの摩擦が発生し、深刻化するものと予測されます。同時に、そうした異質の価値観の衝突の中から、新しい地球文明の原理・基礎が生まれる可能性にも大いに期待できます。いま、その意味で、アジアは熱く、未来への可能性に満ちた地域なのです。




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