1 インターネットの概要
[ 1節 ] [ 2節 ] [ 3節
] [ 4節 ] [ 5節
] [ 2章 ] [ 目次
]
1)インターネットの普及度
インドネシアのインターネットの普及は、東南アジア諸国のなかでは、人口比、GNP比からみても、相対的に遅れているといえる。歴史的には、80年代後半から、研究者中心にインターネット接続が実現されてきたが、商用ネットは首都ジャカルタなど一部地域に限定され、広大な国土を十分カバーするには至っていない。ユーザー数も10万人を下回っていると見られ、2億人近い総人口からみるときわめて少ない。
アジア諸国のインターネット普及度

(ユーザー数は97年の推定・人口・GDPは1995年データ)
2)ISPの状況
[ 1節 ]
[ 2節 ]
[ 3節 ]
[ 4節 ]
[ 5節 ]
[ 2章 ]
[ 目次 ]
インドネシアの郵電省(DEPARPOSTEL)は、98年1月までに、42社のインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)を認可している。実際にはこの内、31社がサービスを提供しているとみられる。
ISPの概要

ただし、この数は各資料によって異なっており、正確な数とは言えない。31社という数は、各プロバイダーのWWWサイトのサービス・料金表、APJII(ISP協会)の資料、NTTジャカルタ支店の資料、オンノ(Onno)氏による資料「インドネシアISPのプロフィール」(97年7月10日)などから推定した数である。なお、女性ユーザーの比率は1997年8月現在で10%と推定されている。
1996年にはわずか10社を数えるばかりであったプロバイダーの急増により、各プロバイダー間の競争は激化している。経済危機が深刻化するまでは、タイと同様、インドネシアの各プロバイダーとも、回線の高速化、地方へのサービス拡大に意欲的であった。しかし独自に回線拡大に乗り出せないためジャカルタ、スラバヤ等の大都市にサービスが集中する傾向が強い。
インドネシアでは、インターネットのISPとしての事業を開始するためには、政府による認可を得る必要がある。同時に、少なからぬ金額を有力者に別途提供する必要があることも公然の秘密として語られている。これは、商用プロバイダーに限らず、大学が運用するネットワークにも適用されるという。このあたりは、いかにもインドネシアの国情が反映されている。
1997年現在、インドネシアにおけるインターネットのユーザー数は約5万人と推定されている。「ビジネス・インドネシア」紙(1997年7月)によると、そのうちの70%をジャカルタ市民が占めているという(90%という説もある)。
ただし、業界団体のAPJIIによれば、ユーザー数は推定32万人という。これは企業や大学などの大口顧客の個人ユーザーをすべて数えた数字だという。それにしても、相当の乖離があるといえる。今回訪問したISPやバンドン大学の関係者らは、せいぜい6万人位という低めの数字をあげた。
1997年12月に有力プロバイダー2社を訪問したので、以下にその記録を紹介する。
■インドサット
国際通信を主体の事業とするインドサット社は、1996年4月からインターネット・サービスを開始しており、個人向けのダイヤルアップ・サービスと専用線サービスを提供している。個人ユーザーは11,000人、専用線はわずか30ユーザーである。これまでは口コミが中心で、積極的なマーケティングはほとんどしてこなかったという。しかし、98年からは積極的にマーケティングを行ない、個人ユーザー市場のシェア20%を目指す計画である。
とくに、国際通信が主たる事業であるところから、今後は他のISPに対して、国際回線のゲートウェイ機能を提供するという戦略優位を武器にする考えである。米国とはMCI(5M)、グローバルワン(2M)と、合計7Mで、日本とはKDDと128kの回線で接続している。
また、マイクロソフトと提携してコンテンツ提供事業にも乗り出す予定でもある。インドサットによれば、インドネシアのインターネット市場は、まだ個人ユーザーが主体で、企業側の認識は遅れているという。もっともとくに国際回線ではFAXから電子メールへの切り替えが進み、これに対抗するためにインターネットFAXの提供も考えているという。また国際ローミングでもすでに30カ国以上のローミングを可能としている。
■RADNET
インドネシアの独立系(非電話系)のISPでもっとも評価が高いのがRADNETである。同社はインドネシアでは先発のISPに属し、技術力に定評があり、企業ユーザーに強い。
もともと研究ネットワークに関与していた創業者が、1994年、インターネットの商用化の可能性を見て、インドネシア政府にインターネット事業を認可するように働きかけたのだが、郵電省のパラパック次官がその必要性を認めるのに8カ月かかったという。それでも認可を得ることができ、財閥系ではない国内中小独立資本を中心に会社を設立したという。
RADNETは個人ユーザーが1万人で、全体の40%のシェアを占めているという。もっとも、それが正しいとすると、個人ユーザーが全体で2万5千しかないということになる。一方法人ユーザーは1000社、ただし専用線ユーザーはそのうちの10%だという。これで、市場の70%という高いシェアを誇っている。
同社は全インドネシアの市場のうちの80%はジャカルタに集中していると認識している。したがってアクセスノードも、ジャカルタ、スラバヤ、バンドンの3都市にしか置いていない。
RADNETは、インドネシアにおけるインターネットの成長に対して、様々な阻害要因が働いているととらえている。まず、パソコンと電話の普及率の低いことが大きな障害だという。次に、政府の政策に一貫性がないことも問題で、とくにISPの認可を当初は主として中堅・独立企業に与えていたのが、最近になって電話会社をはじめ大規模な財閥系企業に与えるようになり、それだけ独立系には厳しい状況になったという。その上で、政府による一律の料金規制が自由競争を妨げるという。
市内電話も専用線も事実上テレコムの独占が続き、インターネット事業を自由に拡大する上で大きな障害になっているという。インターネット電話についての規制をあげ、仮に電話事業も自由に展開できるのであれば、自分たちは必ず競争に勝てると彼らは断言している。
また、郵電省が中心になって推進しようとしているヌサンタラ-21については、インターネットについてほとんど触れられていないことを指摘し、その成功を疑問視している。大企業中心でのインフラ構築という基本的な方向性に対しても批判的である。
3)インドネシアのISP一覧
[ 1節 ]
[ 2節 ]
[ 3節 ]
[ 4節 ]
[ 5節 ]
[ 2章 ]
[ 目次 ]
ISPの状況を、一覧表にまとめてみた。各種の異なるソースからのデータをもとに独自に編纂したものである。
html編集者注:本表はただいまデジタル化準備中です。
4)インターネット・サービスプロバイダー協会(APJII)
[ 1節 ]
[ 2節 ]
[ 3節 ]
[ 4節 ]
[ 5節 ]
[ 2章 ]
[ 目次 ]
インドネシア・インターネット・サービスプロバイダー協会(APJII=Asosiasi Penyelenggara Jasa Internet Indonesia /Indonesia Internet Service Provider Assosiation)は、1996年5月に発足したインターネットのプロバイダーによる事業者団体で、1997年12月現在、加入しているISPは40社を数え、ほぼすべてのプロバイダーを網羅している。
APJIIの役員には、副大統領を筆頭に、郵電省、文部省、産業省の大臣と、政府系の電話会社であるインドサット、サテルインド、テレコム・インドネシア等の幹部役員がが名誉職的に名を連ねている。
特別メンバーには、学界から、インドネシアにおけるインターネットのパイオニアが名を連ね、インドネシア大学コンピューター科学研究所所属でトップレベルドメインの管理者であったラマット・サミク・イブラヒム(Rahmat M. Samik - Ibrahim)氏や、同じくインドネシア大学やカナダのマニトバ大学で教鞭をとり、現在IDNICの管理を担当しているバンドン工科大学のブディ・ラハルジョ(Budi Rahardjo)氏らの研究者が含まれている。
しかし、実際の活動は、一部のプロバイダーの経営者の意向を中心に動いている模様である。同時に、専務理事のテディ・プルワディ氏の強烈な個性も特徴的である。後述するが、テディ氏を中心に、このAPJIIが、IDNICの管轄をめぐってイブラヒム氏、ブディ氏らと激しく対立してきたのである。テディ氏に対しては、インターネットを利用して個人的な野望を満たそうとしているという批判が出されている。
APJII自体の活動目的としては、インターネットの利用料金基準の確立、IDNICの確立、インターネット接続(IX)の確立、通信(専用線)料金の(値下げ)交渉などがあげられ、いずれも政府へのロビー活動を中心として展開されている。このうち、利用料金基準、専用線料金については、いずれも郵電省からの通達を出させることに成功している。残るIDNICおよびIXについては、まだ自らが望むような形での成果の獲得には至っていないが、強力なロビー活動を続けている。
テディ氏は、アジアでは企業が政府と協力することは当然であり、インターネットの市場を健全に育成するためには、政府による規制は不可欠だと主張する。政府による料金規制によって、事実上のカルテルを確立することが、事業者にとっても過当競争を回避でき、メリットが大きいという考えのようである。
また、IBMが新規参入する可能性をあげて、インドネシアのインターネット産業を外資から保護することの重要性を説いている。
AJPIIは、IDNICの管轄をめぐって、インドネシア大学、バンドン工科大学らによる現在の運用体制を厳しく批判し、自分たちこそが正統なNICの運用ができると主張している。しかし、国際的なインターネット・コミュニティとの関係が薄いためか、いまのところ、IANA、APNICとも、APJIIを認めるには至っていない。少なくとも主要当事者すべての合意が必要であるというのが、IANA、APNICの基本方針である。
ヌサンタラ-21については、政府部内で郵電省が独走しようとして他省庁から反発を受けたことを指摘した。また、IBMがテレコムと提携して別途「テレマティカ」という、マルチメディア・ネットワークの構想をもっているという。
これらの事業者およびAPJIIへの訪問を通して、インドネシアの商用インターネットの世界は、まだ初期の揺籃期にあり、混乱の様相も強く、政府、大企業、産業界などがようやくその可能性を認知し始めた段階だとの感触を強くもった。インドネシア特有の状況としては、他の産業と同様に、政治の介入によって、利権構造を確立する方向に動きつつあること、そしてその主導権争いが、ヌサンタラ-21やテレマティカといったビジョン主導型のプロジェクト構想を表に掲げることで一層拍車がかかっているとの印象を強くもった。
今後、大手の電話会社が、資本力と政治力をバックに、独立系の先発プロバイダーを脅かし、シェアを高め、インターネット市場の主導権を確立することはすことは十分考えられる。
ただし、経済危機の影響で、国内資本のみで新たな投資を継続することは容易ではないことは明らかであり、外国資本との提携・合併などの可能性も高まっている。
最近になって、中小プロバイダーは、通貨下落によって高騰してしまった国際通信料金のコスト増の対策として、インターネットの相互接続ポイント(IX)を共同で設置し、国際回線を共同利用する動きが出てきたという。現在、13のプロバイダーがIXに参加しているという。
5)インターネット接続料金
[ 1節 ]
[ 2節 ]
[ 3節 ]
[ 4節 ]
[ 5節 ]
[ 2章 ]
[ 目次 ]
インドネシアのインターネットの接続料金については、以下に紹介するように、郵電省によって基準料金が定められている。郵電省では、1996年1月30日付の通達により、インターネット接続の最低/最高の料金基準を発表した。この通達は、「インターネット」、「インターネット接続」、「接続形態」等に関する定義と、接続料の設定基準とを明かにしている。
しかし、実際には、97年5月14日付の「ビジネス・インドネシア」紙によれば、InfoASIAが1カ月時間無制限接続の料金を、標準でRp415,000(98年4月現在のレートだと、約7,500円)からRp.90,000(同1,600円)へと大幅に値下げしたと伝えられている。Rp.90,000という金額は、通常の1月40時間分に相当する接続料である。このInfoASIAの値下げによって、他社も値下げの検討を余儀なくされた。たとえばD-netは、同様のサービス料金をRp.130,000(同2,300円)に設定した。CBN-netのように新規加入者に対して2カ月は無料接続サービスを提供するプロバイダーもある。
各社のホームページに載っている料金表を見ても、郵電省の設定価格から明らかにはずれているものもある。このあたりの詳しい事情は不明である。
郵電省によるインターネット料金基準
1. ダイアルアップ接続(アナログ)
A. 個人接続 1,000Rp=18円(98年4月8日現在)

B. LAN接続

2. ダイアルアップ接続 (ディジタル=ISDN)

A. 個人接続

B. LAN 接続

3 専用線接続
