[aisg-news 配信ニュース記録] 1998年11月〜12月(アジアネットワーク研究所/クアラルンプール)
Date: 98.11.1 4:32 PM To: aisg-news@anr.org From: Izumi Aizu Subject:[aisg-news 103] 11月1日、「マルチメディア省」誕生 11月1日、「マルチメディア省」誕生 マレーシアのMSCの売り物の一つ「サイバー法」の一部、「マルチメディア 融合法(正式には、Communications and Multimedia Act 1998)」の成立 を受けて、11月1日付で、「マルチメディア省」が誕生した。これは、10月 30日の首相記者会見で、マハティール首相自らが発表したものだ。 「マルチメディア」を正式名称とした省庁は、世界でもおそらく初だと思われ る。もっとも、まったく新しく成立したわけではなく、これまで存在してきた 「エネルギー、通信、郵政省」を改組・改名したものである。初代の大臣に は、同省のレオ・モギー大臣がそのまま就任した。 「マルチメディア融合法」は、簡単にいえば、インターネットなどの登場に よって、これまで別々の分野だった放送と通信の境界が明確には分けられ ないようになり、またインターネットそのものが、両者とも異なる性格の独立 したメディアとして成長してきた事態に対応して、「放送・通信・コンピュー ティング」の3分野を統合的に所轄し、長期的な振興政策を推進する行政 体を作ろうというものだ。 マレーシアでは、これまで放送については情報省が通信とは別個に規 制してきたが、この放送分野の担当省を情報省からマルチメディア省へと 移管するというもの。 同時に、これまで通信・郵政省が管轄してきた事業認可を含む規制権 限は、やはり新設される「通信・マルチメディア委員会」に移管され、放送 についても同様に情報省から移管される。この委員会の初代の委員長に は、元テレコムマレーシア幹部のサイド・フセイン氏が就任した。これに よって、通信については、これまでの「ジャバタン・テレコム(電気通信庁)」 の存在そのものがなくなる。ただし、マルチメディア融合法の施行は、99年 の4月1日からとなっているため、それまではジャバタン・テレコムも存在を 続けるという。 また、情報省は放送の認可権限以外はこれまで通りとされ、その認可に ついても、当面は両省で協議すると、首相は説明している。情報省は、こ れまで通り、政府の政策・行政に関する情報発信の政策・実施を担当す るとともに、国営放送局であるラジオテレビ・マレーシア(RTM)や、国営通 信社ベルナマの運用担当も続ける。 また、郵便事業の規制も、ディジタル署名法の所管も、それぞれ新設の 委員会に移管される予定だという。ただし、郵便関係は、法律の改正を行 ってから実施されるという。この辺の詳細は明らかにされていない。 なお、マレーシアでは印刷物の出版(新聞・雑誌・書籍)についても、認 可制になっているが、これは内務省(首相が内相を兼任)の所管となって いる。 注目されるインターネットについての政策は、マルチメディア省が担当す る。 こうして、新設されたマルチメディア省が、MSCの政策遂行に、これまで 以上の権限をもつようになると考えられる。その意味で、レオ・モギー大臣 のポジションも強化されたと言えるだろう。 なお、ANRでは、12月1日に、クアラルンプールで、顧問である公文俊平 GLOCOM所長を招き、「スチューピッド・ネットワークの時代」と題したシン ポジウムを主催することを予定しているが、そのパネル討論の司会を、レオ ・モギー、マルチメディア大臣が行なうことが、やはり30日に決定した。この シンポジウムは、NITC(国家IT委員会)、PIKOM(マレーシアコンピュータ 産業協会)、MDCが共催者となる。 なお、詳細については、追ってまた報告する。 会津 泉 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * Date: 98.11.13 8:09 AM To: aisg-news@anr.org From: Izumi Aizu Subject:[aisg-news 104] 成田から ICANN会議を前に 今年おそらく最後の、アメリカ出張になります(今年は5月、7月、9月と続い て、これで4回目になります)。 昨夜KLを出て、いまは成田のラウンジです。11時の便でニューヨーク経由、 ボストンに行きます。 今回は、インターネットの、ドメインネーム・IPアドレス問題を管理する新組織、 ICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers )=アイキャン と呼んでいます)のオープン・ミーティングに参加することと、その直前に、 アスペン研究所による、インターネット・ポリシーについての、非公開の会議 に参加するのが目的です(こちらが先で、ワシントンで開かれるはずだったの が、ICANNの会議と重なったので、直前に場所を変更したのです)。 たった2泊して、日本に来週戻ってきますが。 インターネットのドメインネーム問題では、9月末までに新組織の基礎をつくれ という米国政府の要請で、民間主導でいろいろ動いてきました。 その一部は、ここにもご報告したし、ANRのホームページにものせてあります。 (日本インターネット協会の会報に書いた記事です)。それは、9月末までの 動向だったのですが、その後もいろいろ動いています。 なんといっても、この問題の最大の当事者でもある、ジョン・ポステル氏が急死 したことが、大きなショックでした。インターネットがいまのように誰でも簡単に (といっていいでしょう)使えるようになった根幹で、ジョンが果した貢献は非常 に大きなものがあるのです。白髪にひげとジーンズ、いかにも、西海岸の、イン ターネットのエンジニア、という風貌で、直接話すと、とてもソフトなあたりの人で した。7月のジュネーブでのINETの際に、あのITUから、彼の長年の貢献に対し てシルバーメダルが授与され、ようやく既存の組織からも「認知」されたのです。 死因は心臓手術の後遺症だったやに聞いています。 しかし、ドメインネーム問題では、彼と彼の組織であるIANAに対して、執拗な 非難・批判が続いていました。たしかに、先駆者が世の中に認められるというの は簡単なことではないし、IANAの動き方にも、状況の変化に対して、一徹すぎ るのでは、というように見えてきました。もう一回り、柔軟というか、風通しをよく、従来のインターネット・コミュニティの外側にリーチする姿勢があれば、IANAも ずいぶん違った受け取られ方をされたのに、と思えます。 とまれ、IANAの後継組織としてICANNがつくられ、米国政府が、新しく、ドメイン ネーム等の国際管理組織として認知するために、ICANNが、ICANNを批判す る他の団体とよく話し合い、その主張も入れた規約をつくることを求めているの です。そこで開催されるのが、今度のボストン会議です。 争点は、組織全体の「公開・透明性」、会員組織のありかた、責任の所在、意思 決定の方法、などです。 その直後には、メキシコのモントレーで、ICANNを構成する組織となるはずの、 DNSOという、別の組織の会合が予定されています。これは、国・地域別のドメイ ンネームの管理組織などの集まりが中心です。 12月には、ヨーロッパでまた会議があるようです。アジアでも、1月から3月の間 にICANN主催での会議を開こうという話があります。3月だと、シンガポールで APRICOTという、アジアのインターネットの関係者が大集合する会議があるの です。また準備が大変なのですが。 アスペンの会議は、「非公開」なのですが、もともとインターネットのポリシー関連 の研究をしようというプロジェクトがあり、そのなかで、「アドバイサリー」を集めて インフォーマルな議論をしよう、という趣旨でした。しかし、ICANNの暫定会長で あるエスター・ダイソン、同社長となったマイケル・ロバーツをはじめ、IANA批判 の急先鋒でもある、元インターネット協会専務理事のトニー・ルツコフスキーなど 「当事者」がかなり集まるので、どういう議論になるか、楽しみでもあり、心配でも あり・・・。アスペン研究所に対しても、周りからは「パワーブローカーになるつも りか」という疑念があるようです。 しかも、会場は、ハーバードのロースクール、ここも、IFWPという、一連の会議の 終末をつけるはずの会議を呼びかけて、結局キャンセルしたり、いろいろ議論の サカナにされたところです。 しかし、アスペンといい、ハーバード(のバークマン・センター)といい、研究組織 が、自主的に実際の問題の「調停」を買って出るところは、アメリカらしいといって しまえばそれまでですが、学ぶものがあると思います。激しい議論が続き、下手を すれば、非難の的にこそなれ、あまりメリットがあるとも思えないようなことに、自ら 積極的に入っていく、わけです。 日本でいうとどうでしょう。たとえば、NTTの分割問題について、どこかの研究所 が当事者をみんな招いて、解決案について丁丁発止議論する、ということは、 まず考えられませんね。今回の金融システム問題では、どうでしょうか・・・。 ま、インターネットだから、なのかもしれませんが。 というわけで、私も議論に参加してきます。アジアの地域として、何を主張するの か、難しいところなのですが。日本からは、高橋徹、日本インターネット協会会長 が、ボストンとモントレーの両方に参加されると聞いています。 (お役所からは、どうされるのかなあ? 企業はだれか来られるのかなあ?) また、報告します。 会津 泉 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * Date: 98.12.13 9:04 AM To: aisg-news@anr.org From: Izumi Aizu Subject:[aisg-news 105] MSCの通信インフラについて 報告 MSC通信インフラをめぐって マレーシアのMSCをめぐる最新状況を、通信インフラを中心に要約してお届 けする。 「マルチメディア」を最大の売り物にしているマレーシアのMSCプロジェクトの 成否の鍵を握る最大の要因は、どんな質の通信ネットワークが用意されるか にあるといってよい。 もちろん、「サイバー法」をはじめ、企業誘致のインセンティブ、交通インフラ など他の様々な要因も重要だが、21世紀の情報化を最大の焦点とするプロ ジェクトの「目玉商品」が、「世界最高水準の通信インフラを最低水準の料金 で提供する」との「公約」だった。 しかし、皮肉なことに、「最大の売り物」となるはずの通信インフラが、このまま いけば「最大の弱点」となりかねない。国際大学GLOCOMの公文俊平所長を 招いて「スチューピッド・ネットワークの時代」をテーマとした講演会を企画した のも、おおきく言えば、この通信インフラの問題を喚起することだった。 公文所長のメッセージは、煎じ詰めていえば、「これからの通信は、インターネ ット・プロトコルを中核技術としたIPネットワークが主流となることは確実だ。MS Cも採用を決定しているATMを核とするインテリジェント・ネットワークは、出来 上がる頃には早くも時代遅れになってしまうだろう。そうなる前に、2000年問題 への対応も十分な、最新の"Y2Kフリー"なネットワークを早期に構築することが 決定的に重要だ」、というものだった。 MSCの通信インフラについては、MSCの計画が最終的に固まる以前の96年 7月という早期の段階で、国営電話会社として長い間マレーシアの通信を独占 してきたテレコム・マレーシア(TM)が、独占的に担当することが決定・発表され ていた。しかし、残念ながらTMは、多くの独占・国営電話会社と同様に、インタ ーネットに代表される新しい技術的な流れを認識・理解することができないまま 今日に至っている。 TMが新しい潮流を理解しなければ、MSCの通信インフラは旧態然としたもの にとどまることは火を見るより明らかといってよいからだ。 こうした背景の下、今回の講演会の企画を進めるにあたっても、できればTMの 関係者にも来場してもらい、現状の見直しに通じるようになることが、無謀かもし れないが、最大の狙いでもあった。そのための方策として、レオ・モギー新マル チメディア大臣の来場を求め、幸い大臣からの快諾を得ることはできたのだ。 しかし、TM関係者からの反応は芳しくなかった。誰からも出席の意思表示が なかったのだ。そこで、共催4者の一つであるNITC(国家情報技術評議会)の 事務局であるMIMOS(電子システム研究所)に、大臣に趣旨を説明し、TM幹部 の参加を指示するように依頼する運びとなっていた。しかし、MIMOSからの依頼 は実現しなかったのだった。(こういう詰めが甘いのは、マレーシアによくあるこ とだ。ANR自身で大臣に直接説明すべきだったのだ)。 当日は、TMはもとより、競合する電話会社からもほとんど参加がなかった。大 半は、コンピューター業界の人間だった。そのなかで、交換機メーカーであるア ルカテルの人間が来ていた。アルカテルは、MSCのATM交換機をTMから受注 したメーカーで、シンガポールの国家プロジェクトであるSingaporeONEでも基 幹交換機に採用されている。しかし、同社のATM交換機は97年から稼動してい るSingaporeONEのインフラネット(1-NET社が運用している)に採用されている が、イターネット、あるいは、IPとの相性が悪く、動画系のサービスは実効速度が 遅く、停滞している。 MSCでも、アルカテル社の同系列の交換機の採用が決定され、発注済みである。 このままだと、MSCでもインターネットと相性の悪さに悩むことは必至である。 事実、講演会終了後の懇親会で、アルカテルの社員がアプローチしてきたので、 シンガポールでインターネットとうまくいっていないことを指摘したら、当初は否定 しようとしたが、具体的な根拠をあげたところ、事実を認めた。ただし、「シンガポ ールでは1000シリーズが利用されているのに対し、マレーシアでは700シリーズ という小型の製品なので問題はない」というのだ。そこで、「それでスケールするか どうか?」、つまり「利用が増大したときに性能・費用がうまく追随できるか」という 質問をしたところ、急に歯切れが悪くなった。「実はATMではなく、IPの技術開発 もいま進めているところだ」と、素直に認めていた。 承知のように、電話会社が交換機を購買するときは、多くの場合、技術要因以上 に政治的な要因がものをいう。マレーシアも例外ではない。欧米および日本のメ ーカーが、それぞれ有力政治家とのコネクションを無事に売りこみを図ってきたと いわれる。TMの決定も、当然政治家におおきく影響されている。アルカテルは、 TMにはかなり食い込んでおり、実はすでに技術的には失敗を重ねているにもか かわらず、COINS、政府ITネット(GITN)、MSCなどの受注が次々に決まったこと は、明らかに政治的決定といわれている。実際、今年2月のMSCの国際顧問会議 (IAP)の場でも、アルカテル本社の会長は、傍目からも明らかに、最重要人物とし ての処遇を受けていた。 私自身は、決定の背景に政治的要因があるかどうかは、実はそう重要ではないと 思っている。決定された内容さえ、技術的な流れに沿ったものであれば、賄賂が からもうが便宜が供与されようが、エンドユーザーとは関係ないからだ。困るのは、 政治的要因のせいで、間違った技術判断がなされてしまうことだ。アルカテルが、 IPネットの流れ、いやATM技術においても、高い技術力があって受注しているの であれば問題はないが、事実は明らかにそうではない。 公文講演会の前後に、マレーシアはもちろん、シンガポールにも出張して、限 られた時間のなかで関係者に接触した限りでは、これらの懸念は単なる杞憂で はなく十分根拠のあるものであるとの確信を深めた。 MDCの関係者からも、「ATMがうまくいかないとなると、非常に困る。すでに発注 済みだからだ」との声が上がっている。公文所長はマハティール首相とも直接面 会したのだが、そのときにも、「現在採用されているATM中心の通信技術では時 代遅れになる。IPネットにすべきだ」と明確に進言している。首相の反応は「しか し、それは相当高価なのでは?」というものだった。公文所長は「むしろずっと安 くなる」と答えた。首相は「最近は次から次に新技術が登場した、どれが正解なの か選択が難しくて困る」と、正直に述べていた。 最近聞いた、IT業界の幹部の話しによると、TMは首相に対して、新しい通信イ ンフラの技術的な方向性についての報告書を年内に出すことを求められている、 という。TMの技術力(の欠如)については、マルチメディア大学、MSCのパイオニ ア企業など、いわばユーザー側からも強く指摘されている。MIMOSのトンク・アズ マン社長も、公文所長を招いてのセミナーの冒頭で、レオ・モギー大臣の横で、 名指しこそ避けたものの「ある会社がATMに固執して間違いを犯そうとしている。 我々は一貫してIP型のネットの重要性を指摘したきたのだ」と明言している。 TMが発注済のアルカテル交換機によるネットワークを断念してまで、IPネットへ の移行という大胆な決断を行える可能性は、少なくとも現状ではきわめて低い。し かし、経済危機の結果、MSCのインフラ構築も、道路工事をはじめ、企業進出の ペース、規模も当初計画よりはかなりの遅れが出始めており、これがかえって計 画の見直しへの時間的余裕を与える結果となっていることも事実である。 なお、サンマイクロ社はこの10月にマレーシアでの独立した法人に昇格し(それ までは連絡事務所)、JAVAおよびGINIの本格的なサポート・教育センター活動を、 MSC域内で行うものとみられる。来年初めには、これまでのJAVAセンターの路線を 見直した、新しい構想が発表されるだろう。テレメディシンなどのフラグシップ・アプ リケーションにも、同社のプラットフォームが採用されたという。今後、国立・私立大 学にJAVAの訓練センターを設置し、本格的な展開を行うものとみられる。 余談だが、この8月に、電子メールで、インドネシアの不法移民によって市内に暴 動が起きるとの噂を流したとの容疑で、インターネットのユーザー4名が逮捕され、 現在裁判が始まりつつあるが、そもそもその噂の震源となったメールは、すでに過去 2年ほどのあいだ、何回も流れてきたいわくつきのメールだったようだ。これまでは、 大きな騒ぎにならなかったのが、たまたまこの8月には、市民が真に受けてスーパーに 買い溜めに走ったりして、社会的な事件になったために、自分のところに流れてきた メールを同僚社員全員に転送したシステム会社の社員や銀行員が逮捕されてしまっ という。 解任・逮捕されたアンワール前副首相を支援する運動も、インターネットを効果的 に利用している。それだけに、政府側が、インターネットによる反政府的な情報の流 布に神経を尖らせていることも事実である。 なお、インターネットについては、既存の2社以外に、通信会社5社にISPの事業免 許が与えられたが、うちビナリアン社が早ければ99年前半にサービス開始するとみら れている。他社については、経済危機の影響があって、開始時期などは不明である。 会津 泉 aisg-newsメニューへもどる
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